2009年9月7日月曜日

村上スキーム 地域医療再生の方程式 感想

 先日、地域医療再生のシステム関係で相談を受けたので、先延ばしにしていた村上スキーム「地域医療再生の方程式」を読みました。もしかしたら、村上さんとは真狩温泉で北海道はカヤック天国ですよという話をしたかもしれないですが、確信はありません。
 題名は、村上スキームと書かれていますが、村上スキームとは一体何か?スキームが全く見えてこず、三井貴之さんとの反論がない阿吽の呼吸で綴られる対談という不思議な書です。

 対談の中で、住民が国に求める医療を「ウォンツ」「ニーズ」という対比が出てきます。しかし、私に言わせれば、ウォンツもニーズも同じ事で、これらの言葉は、
  • ウォンツ:いざ病気になったら、どんな病気でも治療をしてくれる高度医療を地方にも望む事。
  • ニーズ:予防を基本とした、かかりつけ医の制度。
に置き換えた方が読みやすいと思います。

 国の借金が増え、高齢化社会に突入し、医療費が増える現実。どう考えても予防医療に重点を置くしか、医者不足の問題、医療費の問題、医療施設の問題を解決できないであろうという事が書かれていると思います。

 この観点を医者の育成問題では、スペシャリストとゼネラリストという対比で語られています。私自身、カヤックをする関係で住所・氏名・血液型を記述して身につけるSOSカプセルというものを持つ事もあったのですが、その中に「かかりつけ医」を記述する項目がありました。日本において、「かかりつけ医」と言われても「???」そんなのイネェよ・・・。というのが一般的な感覚だと思います。よくテレビでスーパードクターが特番で放映され、脚光を浴びています。そのようなドクターと施設は、全ての地方にいる必要は無く、人口の多い都市部にあれば十分だという主張です。これを地方に望む事が、今の地方における医療に対するウォンツです。それと対比して、村上さんの考える地方で必要な医療というのが、どのような病気でも診断できるゼネラリスト=かかりつけ医の制度です。これがニーズです。

 ゼネラリストがほとんどいないので、どこか具合が悪い場合に、何科を受診したら良いのか悩む事になります。本書によると海外では、ゼネラリストの診断があり紹介状を書いてもらえないと、CTスキャンどころか、エコー検診すら受けられないとあります。実際、かかりつけ医という制度が日本には定着していないので、自分では、こんな経験をした事があります。

 一度、ひどい頭痛を経験しました。人生40年近く生きてきて、こんな酷い頭痛を経験した事が無かったので、脳の血管がどこかおかしくなったのかも?と不安になりました。ところが、どこへ受診に行けばいいのか皆目見当もつきません。ま、近いし、北大の病院でも行っとけ・・・というノリで紹介状もなく受診に行ったら、その時の先生が脳の権威ある先生だったみたいで、「生命の危機があるほどの事態であれば、ガンガンする程度ではなく、頭をハンマーで殴られたみたいな痛みがあり、ここを受診する患者さんは順番待ちをして、ようやく検査を受けれるという状況だから、君みたいな人が受診するような所じゃない」とバッサリ切られました。この時、「ああ、大学病院というのは、そういうところなんだ・・・」と思ったものです。

 このゼネラリストという考えも重要ですが、それ以上に予防医療の大切さが語られています。プールの施設を利用して、高齢者に夜間等に集まってもらって水中歩行を実施する事で、外来の患者が半分減って皆健康になったという話です。他には、予防接種に市町村から助成金を出し、その予防接種を受けた人と受けなかった人とで、その病気になった時の医療費に差をつけるといった制度なども語られています。

 村上さんの考え方が封建主義的な家庭のあり方を良しとする感じに思えたので、ちょっと賛成し兼ねる部分もありますが、地方の医療、今後の日本の医療を考える上では、本書は外せない一冊であると思います。

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