題名からすると、世界的金融危機を発端とする未曽有の状況がデフレを誘発し、フリー(無料)ビジネスが勃興しているような事が書かれてあるのかな?と勘違いしかねません(いまどき、そんなやつはいないか…)。本書は情報革命が引き起こした現象としてのフリーに関する考察が書かれています。
フリービジネスの現象を肌では実感していても、消化しきれていないというのが本音な人は、私も含めてたくさんいると思います。「フラット化する世界」等にも書かれているように、通信インフラが発達した事により場所の概念が変わり、真の機能競争・価格競争に突入しました。そして、半導体の集積度がムーアの法則により年々上がっているおかげで、1サービスあたりのコストが年々下がっています。そして、この事実が、フリービジネスを引き起こしているというのです。
様々な角度から、フリービジネスに関する考察が書かれており、中でも面白いと思ったのが、ブラジルにおける音楽ビジネスの例です。この例では、インターネットによるフリー化の現象とは関係なく、テクノロジー(CDをコピーするコストが安く簡単になった)の進化によるフリー化がビジネスの形態を変えています。
テクノロジーの進化で言えば、3D-printer があげられます。こうしたものは、どんどんと、ビジネスを変えていくでしょう。
本書でフリーについて、かなり考察されていますが、現実は、まだ底を見せていないのではないか?という疑念が湧いてきました。ムーアの法則は、一般的には18ヶ月とされています。この期間を 1 mi として、単純に規模の差が、どの程度あるのか考えてみます。個人所有のパソコンを基礎として
個人所有のパソコン
差:2^5 = 5 mi -> 7.5 年
サーバーラック 個人所有のパソコン×32台
差:2^2 = 2 mi -> 3 年
企業内データ・センター(小)
サーバーラック×4セット
差: 2^3 = 3 mi -> 4.5 年
中型データセンター
サーバーラック×32セット
差: 2^5 = 5 mi -> 7.5 年
大型データセンター
サーバーラック×1024セット
差: 2^4 = 4 mi -> 6 年
大企業データセンター
大型データセンター×16
という感じになります。ハードディスクの容量や、通信回線速度などは、18ヶ月とは異なる進歩になるため、だいぶ乱暴な推論ではありますが、28.5 年後には、個人の手に google がある勘定になります。そうなった時には、どんな時代が到来しているのか、ちょっと想像できません…。
本書は、IT産業に関わる人なら必読の書と言えるでしょう。
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