研修医向けの被曝ページを見ると、日本の医学界は閾値ありモデルを採用しており、総じて、人体は放射線に強いという立場をとっている事が伺える。著者の近藤宗平さんは、経歴を見ると、この分野のスペシャリストである。そんな方の書いた本「人は放射線になぜ弱いか第3版」を、あえてdisってみようと思う。まぁ、専門家の方は、本書をdisれる立場に無いだろうし、研究職の方もdisりづらいだろうと思う。必然的に私のような放射線に関する素人が、率直に感想を述べるのが適しているように感じたからだ。ただし、p53たんぱく質の働きなどの説明は、とても面白く、DNAが修復される過程には感動した。本書が駄目という訳ではない。しかしⅤ章の後半からは、ちょっといただけない内容だ。
ホルミシス効果に関して、参考文献が載っているⅤ章(26)~(28)は、ここだけ、本に載っていたというレベルで、研究により立証されたというレベルではないように思われる。低線量の放射線は怖くないと宣伝したいのだろうが、ちょっと無理があるのではなかろうか?
Ⅵ章の文献(1)、恐怖心が新生児の体重に影響したというものも、ちょっといただけない。体重が減ったというデータの原因が恐怖心等のストレスによるものだと、どうして断言できるのだろうか?
同じくⅥ章にて、中国の高自然放射能地区と対象地区における甲状腺癌の比較を行ったものがあるが、ヨウ素131は体内被曝で甲状腺に集積するから問題があるのであって、このデータにおける比較は意味が無いのではないか?ここは、理解しかねる。
同じくⅥ章の原爆被曝手帳保持者の追跡調査に関して、広島・長崎で生き残ったのは、放射線に強い人たちではないのか?
全般的に、統計データを扱うので、チェルノブイリに関しては、データの信頼性が大きく左右するはずである。旧ソ連の体制で、はたして、正常なデータが取得できたのか、はなはだ疑問である。とくに日本政府が発表したチェルノブイリにおける放射能事故による死亡者は、もっとも少ない人数のデータを採用したものであった。
これは私の勝手な想像であるが、Ⅳ章の図13では、隔日で放射線を照射しており、マウスの体細胞に休息が与えられている状態がある。この場合、休み無くβ線を照射し続ければ、閾値はもっと低くなるのではなかろうか?休息が、細胞の崩壊を促すスイッチと、崩壊を止める働きのスイッチは、バランスよく働くのではないか?という推測からである。
確率論的に考えれば、修復できないような損傷をDNAが受けて病気に発展する確率は、線量に比例する。どんなDNA損傷でも十分な時間があれば100%治癒できるという能力が人間に備わっているならば、閾値ありモデルは受け入れる事ができる。今の段階では、どうだろうか?普通に考えれば前者だと思う。
内部被曝に関しては、安全とされる材料が見当たらないように思う。これは現在の放射能安全論調全般に言える事だが、外部被曝の基準で放射能の安全性を論じすぎているのではないか?と危惧するのである。
追伸:
昨日、飛行機に乗ったが、上空の雲が不気味な感じだ。そろそろチェルノブイリを越えたのではないか?外部被曝も未知なるゾーンに突入してないか心配だ。
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